かかりつけの病院で                                             定期健診を受けたいと言われたら


 かかりつけ病院で定期健診を受けたいと言われたら

                 

会社指定の健康診断で定期健康診断を実施しています。

ある社員が近所のかかりつけの病院で受けたいと言ってきました。

このような個人的な希望を認めなければならないのでしょうか?

 

 法定の検査項目をカバーしているのであれば、別の病院で受けた健康診断を会社に提出するという方法も法律上では認められているため、会社が拒否することはできません。

ただし、後でトラブルにならないよう検診費用の負担などについて決めておく必要があります。

 

 

★★医師選択の自由がある

会社は社員に対して定期健診を受けさせる義務があり、社員側にも定期健康診断を受診する義務があります。ただし、必ずしも会社の指定する健診機関で定期健康診断を受けなければならないわけではありません。労働者には「医師選択の自由」があります。

労働安全衛生法で義務付けられた定期健診の検査項目をカバーしているのであれば、別の健診機関で健康診断を受け、その結果を事業主に提出しても良いとされています。

ですから、別の病院で受けたいという社員からの申出を拒否することはできません。

 

★★健診の費用は会社負担?

まず、検診費用は誰が負担するべきかという問題があります。定期健診など法定の健康診断の費用については、行政通達において、「会社が負担すべき」とされています。ただし、会社の指定する健診機関ではなく、社員が指定する健診機関で健康診断を受け、結果の明細書を会社に提出したような場合は、その費用まで会社が負担する義務はありません。交通費なども支払う義務もありません。また、法定の検査項目以外に任意でオプション検査を追加した分についても会社が負担する義務はありません。

 

★★健診の時間に賃金を支払わなければならない?

次に、定期健診を受けている時間は労働時間になるのか、賃金を支払わなければならないのかという問題です。健診中の賃金について、政通達では、定期健康診断は業務遂行と関係ないため「労使協議して定めるべき」としながらも「受信に要した時間の賃金は事業主が支払うことが望ましい」としています。実際、賃金支払いの対象となる労働時間として扱うのが一般的です。

では、会社の指定する健康診断以外で健康診断を受診した場合はどうでしょうか。この場合、受診時間を労働時間として扱う就業規則の規程や合意がない限り、労働時間として取り扱う必要はありません。

以上のように、個人的に別の病院で定期健康診断を受ける人について、法律上は会社が費用を負担する義務もありませんし、受診時間の賃金も支払う義務もありません。もちろん個人的に別病院で受ける場合でも会社が負担することは全く問題ありません。トラブルにならないよう事前にルールを決めておくことが大切です。

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