「106万円の壁」が撤廃される見込みです。「最低賃金の状況を踏まえて撤廃する」とされており、2026年の春にも正式に撤廃される見込みです。
ではこの撤廃でどんな影響があるのでしょうか。今一度、パートタイマーの社会保険の加入要件を確認しておきましょう。
【社会保険に加入するパートタイマーの要件】
現在、次の5つの要件をすべて満たすパートタイマーは社会保険に加入しなければなりません。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金月額が8万8,000円以上
- 学生ではない
- 2ヵ月を超える雇用の見込み
- 従業員数51人以上
一見するとシンプルな条件のようですが、実際には「このケースはどうなるの?」と判断に迷う場面が少なくありません。
ここでは、よくある疑問を整理して見ていきましょう。
パートタイマーの社会保険加入Q&A
Q.残業して週20時間を超えたら?
「週20時間以上にならないよう、残業を頼まれても断らなければ」と考える人もいますが、
この要件は実際に働いた時間ではなく、「所定労働時間」で判断します。
つまり、雇用契約では週に何時間働くことになっているのかということです。
たとえば、1日7時間・週3日勤務という契約であれば、所定労働時間は週に21時間となり、週20時間以上という要件を満たします。
実際には週に20時間未満しか働かなかった週があったとしてもです。
Q.週20時間未満の契約にしておけば実際には長く働いていても加入しなくていい?
では逆に、契約上、週20時間未満にしておけば、
実際には長く働いても加入しなくてよいのかいうと、必ずしもそうではありません。
一時的に20時間を超えたからといって直ちに加入対象となるわけではありませんが、
週20時間を超える状態が2か月以上続くようであれば、加入することになる場合があります。
Q.月によって月収がちがうときは?
賃金月額も、「実際に支給された賃金がいくらか」ではなく、所定内賃金、
つまり「雇用契約で決めた賃金がいくらになっているか」で判断します。
たとえば、一時的に忙しく残業などで月8万8,000円以上となることがあったとしても、
雇用契約では8万8,000円未満であれば②の要件を満たさず加入対象とはなりません。
ただしその場合でも2か月以上に渡り8万8,000円以上となり、
その状態が続くようであれば3ヵ月目から加入対象となります。
Q.通勤手当や残業代も含めて計算する?
8万8,000円以上となるかどうかを判断するときに気になるのが、
通勤手当や残業代、さらには各種手当を含めるのかどうか、という点です。
この場合、通勤手当や残業代は含みません。また、精皆勤手当ても同様に含まれません。
Q.時給制の場合、月額賃金はどう計算する?
パートタイマーの場合、月給制ではなく時給制の人が多いでしょう?
その場合は、雇用契約等にもとづいて、次のように計算します。
月額賃金=時給××
これは、1年を52週(1カ月を約4.3週)として計算するということです。
この計算式で出した金額が8万8,000円を超えているかどうかで判断します。
Q.「106万円の壁撤廃」ってどういうこと?壁を気にせずたくさん働けるようになる?
賃金月額8万8,000円を年収に換算すると約106万円となるため、「106万円の壁」と呼ばれています
(実際には年収ではなく月収で判断されます)。
ところが近年は、最低賃金の引き上げにより、この基準が事実上意味を持たなくなってきました。
冒頭で示した5つの要件は、「すべて」満たした場合に社会保険に加入することになりますが、
①の「週20時間以上」という要件を満たす人は誰でも②の「8万8,000円以上」を満たすという状態になってきたのです。
たとえば「週20時間以上働いて、月8万8,000円以上になるのは時給いくら以上か」を先ほどの計算式で逆算すると、時給1,015円以上となります。
2025年度の最低賃金額の改定により、全国すべての都道府県で時給1,015円を上回ることになりました。最も近い地域でも1,023円です。
つまり、この8万8,000円という要件は今後あってもなくても同じなのです。
ですから、撤廃によって「社会保険に加入せずたくさん働けるようになる」というわけではありません。
しかし「○○の壁」という言葉のイメージから、壁が撤廃されると「制限がなくなった」と直感的に思う人も多いようです。
Q.通信制の学生や大学院生は?
③で言う「学生」とは、一般的に高校生や大学生、短大生、専修学校の生徒などを指します。
ただし、次のような場合には「学生であっても」社会保険の加入対象になります。
・卒業後も同じ事務所で引き続き働くことになっている人
・休学中の人
・定時制や通信制の学生
・社会人大学院生など
Q.2ヵ月契約なら対象外?
最初の契約期間が2ヵ月以内でも、
次のような場合は「更新されることが見込まれる」と判断され、初日から社会保険の加入対象になります。
・就業規則や雇用契約書などに「更新される」「更新の可能性がある」と明記されている
・同じ事務所で、同じような契約の人が契約更新されて2ヵ月を超えて働いた実績がある