ハラスメント規正法が始まります


どこまでが指導で、どこからがパワハラ?

職場のハラスメント対策の強化を柱とした「女性活躍・ハラスメント規制法」が昨年5月に参議院で可決・成立しました。

たくさんの改正点がありますが、中でも注目されているのはパワハラ防止措置の義務化を定めた「ハラスメント対策の強化」です。

 

◆◆◆パワハラの定義◆◆◆

職場のパワーハラスメントとは、次のように定義されています。

同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係など含む職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為。

具体的にどういった行為がパワハラに該当するのか、厚生労働省が示している「パワハラの類型」と過去の裁判例を見ていきましよう。

◆◆◆パワハラの6類型◆◆◆

パワハラの6類型

①身体的な攻撃

②精神的な攻撃

③人間関係からの切り離し

④過大な要求

⑤個の侵害

パワハラは上記のとおり、6つの類型に分類されています。

もちろん、パワハラに当たりうるすべてを網羅したものではなく、

これら以外は問題ないというものではありませんが、少なくともこれらに該当する

行為は避けるべきといえます。

◇◇◇裁判例◇◇◇

    上司が部下に対し「やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います」などど、書いたメールをAとその職場の同僚十数名に送信した。退職勧告とも受け取られる表現が盛込まれているほか、「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の業績をあげますよ」「これ以上、職場に迷惑をかけないでください。」と侮辱的な記載もあった。

 指導・叱咤激励の表現として許容される限度を逸脱したものと判断 し賠償金の支払を命じた。

◇◇◇裁判例◇◇◇

   10年ほど勤務したパートタイマーBらが、契約期間満了により雇い止めされ、地位保全の仮処分を申請。会社側と和解して職場復帰したものの、会社はBらに門の開閉、草取り、床磨きなどの業務をさせて、これまで従事していた業務をさせなかった。

 なお、以前は門は開けっ放しにされており、床磨きは、その部署の従業員が必要に応じてやっていた。Bらにだけこのような雑務をやらせなければならない合理的な理由も無く、見せしめのために雑務をさせたとして判断。

慰謝料の請求を認めた。

◆◆◆会社の責任が問われる◆◆◆ 

  裁判例からもわかるように、パワハラをした人だけでなく会社の責任が認められ、会社も損害賠償を支払うよう命じられるケースも目立ちます。

パワハラに対して会社が見て見ぬふりをしたり、パワハラの相談に来た社員に対しさらに攻撃を加えるなどといった対応はもってのほかです。

さまざまな防止措置を講じていたにもかかわらず起きてしまったパワハラと、防止策を講じていなかったケースでは会社の責任に違いが生じてきます。

パワハラはした人とされた人だけの問題ではありません。パワハラがおこなわれている職場で働く社員全体に大きな影響があるということを知っておきたいところです。

社会保険労務士 川﨑美嘉子

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