喫煙休憩中の賃金を控除してもいい?


 

 たばこ休憩について、たばこを吸わない社員から不満の声が上がっています。

たばこ休憩の時間分の賃金を控除するようにしようと思いますが、何か問題はありますか?

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~喫煙中は休憩時間か労働時間か~IMG_1606

分煙が進む中、所定労働時間中に喫煙室などへ行くたばこ休憩は、労働基準法で言うところの「休憩時間」なのか「労働時間」なのかという問題です。休憩時間であれば賃金を支払う必要はないため賃金控除が可能ですが、労働時間であれば賃金控除はできません。たばこ休憩はその名の通り「休憩」しているのですから当然「休憩時間」だと思われるかもしれません。しかし、法律上は必ずしもそうと言えないのです。

 

~過去の裁判例では~

  休憩時間とは、行政通達では「労働からの解放が保障されている時間」と定義されています。喫煙中一時的に仕事をしていないとしても、上司から声がかかったり、何かあればすぐに業務に戻って対応しなければならないのであれば、それは手待ち時間(労働時間)であって休憩時間ではありません。過去の裁判例では、喫煙場所が職場から離れているかどうか、何かあったときに対応できるかといった要素で、「労働時間」なのか「休憩時間」なのかを判断しています。

 

~喫煙中の賃金を控除できる?~

たばこ休憩と言っても、何かあればすぐに戻らなければならない状態であれば「労働時間」と判断されますから賃金の控除はできません。一方、たばこ休憩中は完全に労働から解放が保障されており、法律上の「休憩時間」であれば賃金を控除することは可能です。ただ、たばこ休憩の時間を正確に把握するのは手間がかかります。たとえば、喫煙室への入退室記録をもとに休憩時間を計算するといった方法になるでしょうか。出来ないことはありませんが管理が煩雑になります。また法律上の「休憩時間」に該当するとしても、いきなり賃金を控除するのはトラブルや混乱のもととなるでしょう。社内通達などで明示し、猶予期間を設けるなど手順を踏むべきです。

 

~賃金控除できないが不満の声が~

  何かあったときに対応するとしても、実際に業務を行っていない時間がたびたび生じている場合は、吸わない社員から見て不公平感があるでしょう。社員から不満の声が上がっているようであれば何らかの対策を検討する必要があるでしょう。

 

~不公平感を解消する方法~

 喫煙者の賃金を控除したりマイナス評価するのではなく、吸わない社員にメリットを与えるというのはどうでしょう。たとえば非喫煙者に「禁煙手当」を実際に支給している会社もあります。現在、健康増進法の改正が検討されており、今後ますます職場の禁煙・分煙ルールは厳しくなると予想されます。

たばこ休憩中の賃金を控除して解決するのではなく、社員の健康のために禁煙を後押しするようなやり方を検討したほうが良いかもしれません。

社会保険労務士 川﨑美嘉子

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